先入観を持たずに工夫する大切さ
この本をパラパラと本屋(石垣島にも本屋はあるのです)で捲り、ウミウシの写真を見たときちょっと不思議な感じに襲われた。
最初、それが何故なのか解らず、思わず購入してお家でじっくり写真集を眺めなおしてみた。
何度か繰り返し写真をみるうちに、「ウミウシの写真にしては被写界深度が深い(手前から奥までピントがあっているという意味です)」ことに気がついた。さらに光が綺麗に回っていることにも。
自分が通常撮影しているウミウシ写真の仕上がりとはずいぶんと違うことから「ムッ・ムッ・ムッ」と不思議に感じたらしい。
実は僕はあんまりウミウシの写真を撮らない。
というのは、一眼レフデジタルカメラに105mmマクロレンズをつけて彼らをアップでとると、どうしても被写界深度が浅く(ピントがあう範囲が狭く)なり、どこにピンを併せるべきが迷ってしまうのだ。
結局、前の触覚にピンをあわせ、その前後はボケているという、ありがちで、かつ全体像を表現するには物足りない写真になってしまうことに落胆を覚え、熱心にレンズを向ける気になれないのでいた。
その秘密を著者は本書のなかで明かしてくれている。
なんとコンパクトデジタルカメラで撮影しているという。
コンパクトデジカメは、一眼デジカメに比べて、被写界深度が深い写真を撮りやすいことが知られている(逆に言えば、ピンが薄い写真は撮りにくい)。
またストロボ光を拡散させる拡散版を自作で工夫することにより、被写体全体に光を回しているという。
かつて水中デジカメ黎明期に、各人がいろんな工夫をしてコンパクトデジカメを水中に持ち込み、様々な成果を挙げていた時期がある。(たとえばアンクルMさんのこのページなんかはその貴重な記録だろう)
僕なんかはその時代を経ながらも、「でもやっぱりきっちり写真をとるんだったら一眼レフだよねぇ」との先入観から、コンパクトデジカメを捨てて、一眼デジカメに流れたのだった。
記述によれば著者がコンパクトデジカメを選択している理由は別のところにあるのだが、その他のコンパクトデジカメの長所に気づき、種々の工夫をすることによって、とても個性的なウミウシ写真の世界を確立したのだ。
最近、コンパクトデジカメで結構な写真をとっている人たちも現れている(あの小野にぃにぃのブログの写真ではコンデジも登場し、「コンデジでここまで撮れるのか」とビックリします)。
もちろん、一眼デジカメが優れていることに変わりはないと思うんだけど、けして一眼デジカメが万能なわけではないのだ。
当たり前のことだけど、そのことに気づかされ、工夫し、熱意をもって被写体に向かうことの大切さを教えてくれる素晴らしい写真集だと思う。

